マジカルルーちゃん
マリカルシッキー




シキのターン


「まぁ、そんなわけでこれからお世話になります」
アルはテーブルの上で深々と頭を下げた。
「はぁ、そんなことがあるんですね〜」
喫茶店そよ風の店長、七星勇が目を白黒としている。
エプロン姿をした男性で、童顔と細身だ。
一見女の子に見えなくも無い。
織がこの店長の弟らしい。つまりここが織の家なのだ。
アル自身、別に隠さなくてもよくない? と思っていた。
姿を表し、挨拶と事情の説明をしたのだ。
目を白黒とさせているが、この店長、七星勇は根が素直だ。
織が小さくなったことも、目の前の妖精もすんなり
受け入れられている。
懐が深いのか、性格か、その両方か?
この兄弟は実は両極端いってるのではないだろうか、
ともアルは心の中で思ったりする。
「部屋は一緒で」
「別々で」
即答する。店長の乾いた笑い声が響く。
「で、いつまでとか予定はたっているの?」
「それが問題にゃ」
困ったように言う。
「この織には私が探しているものを見つけて
もらわねばならないから、見つけ次第じゃな」
「初耳にゃ」
織が口真似しながら、がばっと詰めよる。
「言ってないからにゃ」
キパッと切り返す。
「まぁ、この町のどこかにあるのは違いないが……」
「そのものって何なの?」
店長は聞いてくる。アルは人差し指を立てながら腕を組む。
「んー、どんな姿や物をしているかはわかんないにゃ」
「それじゃ探しようがないんじゃ?」
「いや、結構魔力の高い代物での。妖精センサーに
引っかかるようにある。まぁ、私じゃもてん代物らしいからの」
はっっとして口を塞いだ。塞いだ時には既に遅かった。
織の目の色がキラーンと光っている。アルは嫌な汗が流れている。
「フフン、だったら〜もっと敬え。アルっ娘。むしろ御触りとか、
お持ち帰りとか、一緒にお風呂とか」
ハァハァと呼吸音を立てながらじりじりと近寄ってくる。
アルは一歩退く。
「だっだれがそんなこ……」
途中で止めて、あることに気づき、
にやぁと笑ってみせる。勝利を確信した笑みだ。
「女同士でそんなこと、できぬにゃよ。それに大きさが
全然じゃし。何より今の主はロリコンにゃ」
弾かれたように事実に驚く織。
「はっっ、そうだった……今ロリだったー。兄者〜」
だくだく涙を流しながら店長に抱きついてくる。
「はいはい、泣かない泣かない」
店長は宥めながら頭を撫でる。複雑な表情をしているが、いい人だ。
「ちなみに全部そろえたら願い事が三つ叶える事ができる。
私は一つでいいから、あとは主が好きにするがいい。
なお束縛系の願いとかエッチなことは
即警察沙汰になるのでやめとくがいい」
「ほぅほぅ、だとすると〜アレだ。ボクは新世界の神になる!!」
「ダメだ、早くどうにかしないと……」
条件反射でなのだろうか。店長さんはそう呟き、三人して大笑いした。
「でも本当に女の子になったんだね〜。よかったね」
「よくなーい。服とかどうしよう。買わなきゃ」
「でも念願のロリっ娘になったんだし。楽しんでおいで〜」
ひらひらと手を振りながら言う。
「まぁ、今はまともでも人格もロリ娘になっていくから。頑張るが良い」
アルはにこにこと嘘を言う。
「なっ、なんですって〜」
ノリがいいのか、織はちょっと口調が変わっている。
「口調口調」
指摘されると、はっっとなり次は
「どんだけ〜」
と叫んでしまう。
「それはただのオカマ口調。流行ったけどね。あと寒いし」
「どこまで本当なの、この外道妖精!」
織は見下すように睨み、アルは上目遣いで見上げる。
火花が散る。
「誰が外道じゃ! 体が健全なら心も健全になる、と聞くもん。
体が成長したら心も成長するように、
体がロリになったら心もロリになったって
不思議じゃないんだから。
否定はできないけど肯定もできないと専門家は言ってやるもん」
「解く方法は? さすがに弟がこのままだと困るし」
宙を飛ぶ。勢いよく人差し指を立てながら大きく胸を張る。
「それはもちろんあるに決まっている。なかったら私は悪人じゃない?」
突っ込みどころ満載だからか、二人は腕を組んで首を傾げる。
「こ、これは当事者達の合意に基いた立派な契約なのじゃ。
それに正当防衛じゃぞ。副作用でロリ娘になるぐらい……
それに、メリットのほうが多いだろう?」
「ああ、そうだった。マホウショウジョは本当に捨てがたいメリットよ。
変身したり、空飛んだりビームだしたり必殺技だしたりーああ、うっとり〜」
元は男の身でそんなことを言うのだ。潜在的に眠っていた感情、なのかもしれない。
そんなことを考えたアルはゾッとしたものが走ったが、聞かなかったことにした。
「まぁ、魔法少女となる事件などそう簡単には……」
その時、店内に不思議な音が鳴り響いた。
グツグツニャァニャァという甲高い歌声と共に。
「きたー。活動し始めたぞー。参るぞ。魔法少女シッキーの初出撃にゃー」


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