マジカルルーちゃん
マリカルシッキー


マジカルのターン


それは鬼斬本社に文字通り激震が走った。
突如の揺れにルーもひばりも秘書もピタリと止まった。
「何今の? 地震?」
妖精を片手で握り、もう片手で今まさに100トンハンマーを
振り下ろさんとしている秘書。
その足の下に踏まれているルーちゃんは
「お〜も〜い〜」
踏みにじられている。
「HANASEー」
「やめて秘書、もうひばりとルーちゃんのHPは0よ」
ルーちゃんが悲鳴を上げる。
その時、ひばりの胸元から声が聞こえてくる。
「グツグツニャーニャー、グツグツニャーニャー妖精鍋妖精鍋……
舌噛んだ……コホン、猫鍋猫鍋……やっぱこっちよね〜」
「なに、この気の抜ける歌、というか声は」
「これ、アルおねーちゃんが作った妖精センサーなの」
恥ずかしそうにうつむくひばり。そこには一つの六角形の
ペンダントがあった。その中心にはLXXと文字が刻まれている。
「妖精センサー?」
「この近くに、あるの。私たちが探している代物が」
『なんだってー』



暴れまわる巨人が突如出現した。
ルーちゃんとひばりが降りてきた時には
屈強、無敵の二文字を胸に刻まれた巨人が
鬼斬警備員を蹂躙していた。
あちこちで呻く声と悲鳴が聞こえる。
「肉がー肉がー」
「ま、まっすりゃ〜様ー」
まるで地獄絵図、といわんばかりだが
内部はそれほど破損していない。
「よかったわ〜こんなこともあろうかと天井高くしておいて」
秘書は安堵の声を上げる。
「そこは安堵するとこじゃないから。むしろ、これ止めないと」
「社長の出番ね」
そう、トップたる者、一度危険が訪れたら先頭を切るものだ。



「ここよ」
グツグツニャーニャーと鳴る妖精センサーを止めながら
織に声をかける。回りには取り巻くようにして野次馬が出来上がっている。
「ここて、確か有名な会社だよ。というか人邪魔」
「こんな時のために変身して突破するのよ」
「おっけー……で、どんな変身するの?」
「んーと、この前決めたのなんだっけ」
アルは首を傾げる。織も首を傾げる。
「まぁ、いいや。強制変身言語起動」
「なに、その不穏当な言葉は」
「マジカル」
織の足元に六芒星が輝きだす。
着ているものが輝き、物質変換が始まる。
「マリカル」
アルの声で白一色に染められる。
両手に肘まである手袋が装着、
足には赤い靴、
ロングの白甘ロリドレス、
頭にはティアラが輝く。
「ロックンロ〜ル」
両手に握られるその武器は一見槍のような杖。
細く見えにくいが弦が張ってある。
「ふぅ、まぁ、これでいいでしょ」
「へ、変だ」
「えー、どこが〜。似合ってるじゃない」
反論するアル。
「この性能美が織り出す最高素材をふんだんに使った上、
安全安心仕様、幼児の限界をこそっとブーストするのを
もっとうにしたこの甘ロリドレスはお手製なのよ。
これだけで何人の妖精の命と、膨大な時間を使ったことか」
才能の無駄遣いである。
呆れた様子でアルを見る織の目が冷たい。
「そんなことはいいからさっさと踏み越えていくの」
アルと織は会社へと突入していった。



「ルーちゃん、変身よっ」
同時刻、ひばりは暴れる巨人を見ながら言う。
「へ、変身て」
「秘書さん、強制変身コードを」
「は〜い。社長覚悟してください」
「いあ、代理だから。まだ代理だから」
反論する秘書。だが黙殺する。
「秘書の名において」
「おまえの名においてかよ」
つっこみは止まらない。
「チェェェェェェンジッッマッスルリャァァァァァァァァァァ」
「なんじゃそりゃぁゥォォォォォォォォ」
雄叫びが響き渡った。
背後に巨大な人影を浮かび上がらせ、マッスルポーズを取る。
その影が輝くと共に、腰、肩に黒い金属が浮かび上がる。
背に三本の羽、腕に肘まである金属グローブ、
足に黒い靴、そして体に金属型の白銀のドレスが現れる。
「転送終了っと。うん、開発実験大成功」
「魔法の部分て少なくて楽だわ〜」
「おまえら〜オレの体で実験すなー」
「あ、中身がルーちゃんからルーファス社長に戻ってる」
「うわぁぁぁ、なんて姿に。こんな姿……」
なんだかショックを受けてる様子のようにも見える。
秘書とひばりは止まったルーちゃんことルーファスを見る。
満面の子どもの笑顔で言い切った。
「イイ、これかっこいい〜」
「あれ? ルーちゃんに戻った?」
「みたいね」
嬉しそうにしている横で二人ともひそひそと話している。
「二人とも何言ってるの? いくよ」
ルーちゃんは杖ないよーと声を上げた。




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