マジカルルーちゃん
マリカルシッキー


まだマジカルルーちゃんのターン



「ルー社長。あなたはこれから魔法少女として
社のために働いていただきます」
秘書は眼鏡を光らせながら告げる。
広いテーブルにパンとハムエッグが並ぶ。
もきゅもきゅとパンをかじりながら、
うんうん頷いている話を聞いている。。
「この子と一緒に町に繰り出し、魔法の力と
潜在能力を発揮する。これがお仕事です。
我が社のために頑張ってくださいね」
ごきゅんと呑み込むと、ゆっくりミルクを口にする。
その横で同じようにパンの屑をかじっていた妖精ひばりは
スプーンについたジャムを凝視している。
手にしたパンの屑とにらみ合い、満面の笑みでスプーンを撫でた。
思った以上にジャムがついてしまい、両腕まで
ジャムまみれになってしまった。
おろおろとしながら小さな口でぺろぺろ舐めながら、
ルーちゃんと顔を見合わせる。にぱ〜とした笑みを浮かべた。
「社長?」
「……」
小さな声を上げた。あまりにも小さすぎて聞こえない。
秘書の頬がピクピクとしている。
「えーと、リピィトアフタミィ」
訛った英語で言う秘書。怒気が混ざっているせいか、
髪がゆらゆら動く。相手は子どもなのに大人気ない。
「やだー」
大きな声で叫んだ。その大声が大きすぎて耳が痛い。
「私のお願いでもですか?」
「もっとやだー」
なお、ルーちゃんは即答である。
「だってひしょねーちゃん、いじめるんだもん。
ハンマーもっておっかけられたよ。ゆめの中で。すっごくやだったもん」
ねーとひばりに同意を求める。
「夢の話じゃないですかっ。実際はそんなことしません」
大嘘である。ほとんど仕事をしないルー社長を
撃沈したりするのが日課だったせいか、
100トンハンマーを常に常備している。
記憶を無くしても、その体に受けた仕打ちは覚えているものだ。
「ふぇ〜でも責任とるっていいましたよぉ」
ひばりは両手を組みながらうるうるとした瞳で言う
「そんなこといったおぼえないよー」
「えー。そんなぁ〜」
ひばりはうなだれる。
無理やり記憶喪失にした代償がこれだった。実に無駄な努力である。
ひばりはなお訴える。
「魔法少女になって、私を手伝って!」
ストレートなお願いだが。
「うん、いいよ」
即答。実に子どもらしい反応である。
「ちょっ、なんで私のお願いはダメなのよ」
「べー」
ルーちゃんは舌を出した。
秘書はブチッという音が聞こえた。
100トンハンマーを手にしてゆらりと動き出す。
既に二人はテーブルに乗った食料を手に逃げ出していた。





秘書から逃げた二人はベットの下でのんびりとしている。
隠れるならここだろうと言わんばかりだ。
「で、何を手伝えばいいの?」
「んと、魔法少女になってライバルより先に
回収しなきゃいけないものがあるの。
それを三つ手に入れるってゲームなの」
子どもに分かりやすくするため、ゲームと言った。
実際命がけのゲームであることには代わりが無いが
どうにかなるだろう。
「手に入れたらどうなるの?」
「願い事が三つつかなえることができるの」
「願い事?」
「そそ。私は一つの願いだけでいいから
後はルーちゃんが好きにしていいよ」
「ならー世界征服ー」
子どもらしい夢である。
「世界征服がいいー。世界を我が手に〜
全ての男は私のものーとか叫んでみたい」
本人、今は少女だが、れっきとした男の子だ。
苦笑しながらひばりは口を押さえる。
「声が大きいよ。あの秘書さんにバレたらどうするの」
「その時は魔法少女になって逃げるっ」
「戦わないのね」
汗を拭きながら突っ込む。
「だってアレはラスボスだもん。ラスボスは最後に倒すのが王道よっ」
むしろ常識っと人差し指たてながら言う。
確かにそうだ。妙に納得してしまう。
「じゃっ、魔法の言葉は何がいいかな〜。
実は寝ている間にあれよあれよと決まっちゃったから。
というかコスチュームとか杖とか用意されてるから」
「じゃっ、たぎれッ!わたしのじょうわんにとうきんッ!! とかはどう?」
ごぉぉぉという効果音もつけてーと言い始める。
子どもとはいえ、マッスリャーなルー社長が中身だ。
これはどうしようもないのかもしれない。
「あと変身シーンは省略できる? 裸になるのはーちょっと〜」
「それはラスボス前にしか不可なはずよ。それが王道だもん」
嫌な王道である。
二人して変身ポーズとかを決め始めた。

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