マジカルルーちゃん
マリカルシッキー


「ロリっ子〜〜〜」
発見されたアルに抱きつこうとする影があった。
それは一足飛びで飛びついてくる。
アルはとっさに飛び上がり、それから逃れる。
「何にゃ〜?」
その血走った目に映るは執着と狂気。
若干血走った目をしている。
「ロリっ子みぃぃぃぃーつっけたーぁぁぁぁぁ」
再び飛びかかろうとする。
アルは軽く構える。半身半歩腰打め、片手で
照準にする。
無防備に飛び込む。今まさに捕まえようとする
その一瞬、アルは逆に前に飛び出し、小さな拳を
打ち込んだ。
「だったら、おまえがロリっ子になれにゃ〜」
その一撃にどれほどの力があったのだろうか。
その一撃で弾かれ転がり、木にぶつかった。
鼻先に着地しながらアルは言う。
「汝、ロリ好きならば、汝、ロリになれ、にゃ」
その一言はまるで魔法の言葉とでもいうのだろうか。
抱きつこうとした者の身長が縮み、
どこからどう見ても小学生ほど幼くなってしまった。
「な、なんじゃこりゃ〜」
響く声を聞きながらうんうん頷くアル。
「元の姿に戻りたくば、我に従え。
そうすれば、元の姿に戻してしんぜよう」
アルは嬉しそうに言うのであった。
「やだ」
言葉短く言う。
「だったらそのままだ。これはれっきとした契約だぞ? 
契約は守るためにあるんだから」
「やだやだ。それだけじゃやんなーい」
「我侭な奴だ。ほんのちょっと魔法少女に
なるだけだと言うのに」
あきれたようにやれやれといった感じで首を振る。
マホウショウジョ? とわけのわからない表情で
呟くと、その瞳がさらに妖しく光った。
「変身する?」
「そりゃする。必殺技も魔法も思いのままだ」
「だったらやるー」
「うむうむ。ならこれで。魔法の言葉を言うにゃ。
マリカルマリカルキューキュキュキュー」
「ださーい。もっと他のがいいー」
「む〜、そうにゃね……まぁ暫定的ってことで。
あとでもっといいの考えとくから」
「んー、ならいいけど。お持ち帰りはいいの?」
「誰がおまえのものになるといったにゃ? 
まぁ、近くにいないといけないし、夜は寒いし、
コタツのあるのと臭い部屋じゃないのと
身の安全とあとそうにゃね〜。三食つけろにゃ」
「我侭ー。じゃっ家に帰る〜」
こうして、アルは早々と下僕、もとい
マホウショウジョ候補を用意したのであった。




「……や、めろ……」
ルーファスは捕らわれていた。彼の目の前に映るのは
一人の秘書と、その秘書と意気投合した巨悪の権化、
妖精のひばりが笑顔で言う。
「大丈夫。痛くしませんから」
「いや、その顔、もう信用ならな……」
秘書が鉄塊を振り下ろした。ちゃんと100トンと書かれてある。
「い、痛いじゃないか」
ダクダクと血を流しながら、ルーファスは天を仰いだ。
いったいどうしてこういうことになったのだろう……



ある日の社長室……
「ほーらー、仕事しなさーい」
いつものごとく、秘書がダラダラと怠けている社長こと
ルーファスの前に書類を積みながら言う。
「まぁまぁ、良いではないか良いでは……って
ハンマーを振り回さないでいただきたい」
ぐるぐると頭の上で巨大ハンマーを旋廻させながら
気合を込めて振り下ろそうとした瞬間
……
ルーファスの顔に夥しい血が降り注いだ。
「うわっ、いったいなんだー、秘書よ、もしや誰か撲殺……」
さすがの秘書も固まっていた。一点を凝視したまま、
ピクリとも動かない。
その視線を追ってみると
羽を生やした人形のようなものが、ルーファスの腕に張り付いていた。
「う、うわっっ」
思わず振り払う。
さらに弧を描きながら、まるでダンプカーに
跳ね飛ばされた人のように激しく転がり……
やがて書類の山に突っ込んでいった。



「痛い……体が痛い……アルゥ、私はもうダメです
……先立つ不幸をお許しください」
「いや、生きてるし」
すぐさま突っ込むルーファス。秘書は巨大ハンマーを
どこかへと隠しながら言う。
「無事なようで何より」
「おまえの仕業だろうに」
「うぅぅ……確か、何か巨大なものに跳ね飛ばされて……
なんか凄い勢いで視界がぐるぐると……その後は
白い、白い……なんともいえない匂いのするものの
中に突っ込んだような……」
記憶が飛んでいるのか、頭を抱えながら言う。
全身小さな包帯やらで固定されている。
このおかげで会社の医療班が飛びまわり、
裏方に位置する工作班には小さな高級ベットを作らせ、
分析班に正体やら、DNAやらを分析させたりと文字通り、
仕事が降ってきたわけで。
「全部、社長のせいです」
「ちょっ、おまっ」
慌てて否定しようとするが、その不思議生物は
ルーファスを見、そしてうるうるとした瞳を向けた。
涙がこぼれた。
「ひどいです……」
涙がぽろぽろとこぼれる。周りの視線が社長こと
ルーファスに注がれている。
「いや、だから、あの……あーもぅ、責任とりゃぁ、
いいんだろ? あんたの目的がなんだかしんねぇが、
面倒見て……」
「魔法少女になってください」
「無理っ」
即答。冷たくなるほど顔の前で手を振る。
「だいたい、俺は男だぞ」
「そこらへんは問題ありません」
後ろのほうで声が上がった。
「こんなこともあろうかと、女性化する薬の開発を……」
医療班班長は声高々に宣言する。
いつもの白衣には、いつ用意したのか妖精印の
バッチをつけてある。会員ナンバーなんかもついて……
「な、なんてものを作るんだきーさーまー」
「全ては、我が社の発展のため」
「そーれーさーえーいーえーばーゆーるーさーれーるーと〜……」
「許されます。それが今は亡き会長閣下のご命令ですから」
即答する秘書。
「じいさん……あんたって人は……なんてものを……」
絶句する。
亡き会長閣下とはルーファスの養父だ。
作り上げた会社を後継するのはルーファスと決定して早数年。
「じいさん、答えろよじいさん……
こんな恐ろしい会社を勝手に手渡され、
どうする!!
 しかも辞任すらできないなんて横暴な……
えぇっ、答えろ秘書ぉぉ」
「とりあえず、お仕事と割り切ってしまえばよろしいのでは?」
「これだから企業マンは」
「キャリアウーマンです」
もはや、反論する余力も残っていない。
「素敵なステッキも必要ですね」
「あぁ、それでしたら、これをどこかに
埋め込んでおいてください。お願いしますね、
皆さん……」
弱弱しく微笑むその姿に多くの人たちの目の色が変わる。
明らかに魅了されている技術部の者たちがいた。
口々に「萌え〜」ともらしているところをみると、
かなり末期のようである。
かくして、そして確実に、魔法少女への階段が
出来上がろうとしていた……



「どうせですから、記憶もスパッと
忘れてしまったほうがよろしくない?」
あまりにも不穏な会話に現実逃避していたのが
引き戻される。
全身拘束され、大の字に固定された上、
怪しい器具が視界の中に入ってくる。
今にも改造人間にされそうな雰囲気いっぱいだ。
「そうですね、もっと従順で心優しい社長になって
くれたほうが……むしろ、後からのすり込みは難しいですし」
「ちょっとまてーそこまてー」
「まぁ、記憶の一つや二つなくしても
きっと愛と勇気と体力とマッスリャーの力で
頑張ってくれます。きっと……」
握り拳を作りながら秘書はウルウルとしている。
「なお。この記憶は自動的に消滅するっと」
何やら妖しい薬をパラパラと振り掛ける。
「このやろー、この仕打ちー忘れないぞぉぉぉおおおぉぉZzz……」
「その記憶も自動的に消去しますっと。
あと好感度あがーるあがーるあがーる、私のことをメロメロになる〜」
ガクッと意識がなくなるを確認すると、
秘書は振り返り高らかに宣言した。
「記憶操作もバッチシ。
さぁ、皆さんマジカルルーちゃんの誕生よ〜。
我が社の命運はこのプロジェクトにありっっ」
手術室に激しい光に包まれていった。



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