それはある寒い日の朝だった。





―――週末の大通りを黒猫が歩く



パリス同盟の北方に位置する中規模の都市・・・

その町の一角、俗にスラム街と呼ばれる貧しいものたちが身を寄せ合い、暮らすその場所を少女は居た。







―――ご自慢の鍵尻尾を水平に威風堂々と



年の頃は・・・大体9歳といった所であろうか。

帰る家を持たない・・・路上で寝泊りしているせいで薄汚れてはいるが、子供らしく今は眠たげに目を細めているが大きくくりっとした愛らしい瞳に、綺麗に通った鼻筋・・・

着飾れば、それなりにどこぞのお嬢様といっても通るであろう整った顔立ちに、肩まで届く黒髪の少女は、その目を眠たげにこすりながら通りを歩いていた。







―――その姿から猫は忌み嫌われていた




少女は周りから浮いた存在であった。

頭から飛び出す猫のような耳、臀部から伸びる黒く長い尻尾・・・

彼女はこの街では珍しいヴァーナ・・・"猫族(アウリク)"であった

本来ヴァーナは一箇所に殆ど定住すること無く家族単位で過ごす部族である。

彼女のような幼いヴァーナが1人で生活しているというのは大変珍しいことであった。







―――闇に溶けるその体目掛けて石を投げられた




まるで夢遊病の患者のようにフラフラと歩いていた少女は、近づいてきた人の気配に気付き、目を細めた

「このクソネコが・・・こんなところに居やがったか。」

少女を囲むように立ち塞がる3、4人のヒューリンの少年達・・・それぞれの手には鈍く輝く短剣や角材などの狂気が握られていた・・・



幼い少女に対し武器を持った少年が複数・・・ その状況に対し、周囲は何の興味も示そうとはしなかった。 

むしろ、関わり合いにならぬよう目を背けてる節さえあった。



しかしこのような状況がこのスラムでは珍しいことではない。 

知らずに迷い込んできた旅人や市民がスラムの住人に襲われ、金品を巻き上げられるということなどさして珍しいことではないのだ。

そして、そこに住むものたちも、襲われているものを助けようなどとは露ほども考えない。

たしかに助ければなんらかのお礼をもらえることもあるだろう。 だが、そんなことをしては加害者側を敵にまわすことになりうる。

わざわざ敵を増やす必要もない、この底辺とも言っていい場所で余計に住み難くすることもない。

そんなことをするよりも、襲われた後の被害者に追い討ちをかけてしまったほうが楽に得することも出来る



ここの住人は殆どの者がそう考えていた。 一部の例外を除いては。



その例外が、この黒猫の少女だった。



リーダー格の少年が一歩前に進み声を荒げて

「何度も何度も人の"仕事"を邪魔しやがって・・・テメェどーゆーつもりだ!?」

「別に・・・ただなんとなく。」

「なんとなくだとぉ・・・?」

「そ、なんとなく。ほら、理由もわかったからもういいでしょ。眠いんだからどいてよ・・・、邪魔だから・・・。朝っぱらからトロールみたいな不細工顏見せられて気分悪いんだから・・・」

「テメェ・・・ 二度とそんな舐めた口利けないようにしてやらぁ! お前ら!やっちまえ!」

リーダー格の少年の声に呼応し周囲の少年たちも武器を構え少女に突っ込んでくる。

「あぁ、もうめんどくさいなぁ・・・」

途端、少女の目つきが変わり、すばやく身を屈め横合いから突っ込んできた少年のナイフを躱す。

続いて背後から角材を振り上げ迫ってきた少年に足をかけ転ばせると、正面から近づいてきた少年に[封鎖]されないように横っ飛びに転がり距離をとる。

そして少女は素早く身を起こしそのまま路地裏に逃げ込もうとした

「クソッ 逃がすかよ!」

叫びとともにリーダーがナイフを投擲する

少女は咄嗟に避けようとするが、狭い路地の壁に邪魔され躱しきることは叶わなかった

「くぁっ・・・」

右腕に痛みが走る。 直撃こそしなかったものの掠ってしまったらしい。 だがそのまま走る速度を緩めることもなく黒猫は路地裏へ身を躍らせた。







――――孤独には慣れていた。むしろ望んでいた。誰かを思いやることなんて煩わしくて。




思ったより、傷は痛かった。

痛くて痛くてついつい眼に涙を浮かべていた。

少年たちを振り切った少女は一般市外に近い通りを歩いていた。

傷は思ったよりもザックリ切れていて、見るだけでも痛かった。というか痛かった。

だけど泣かない。泣いたらあいつ等に負けたみたいでくやしいもん。それに私負けてないし。むしろ勝ち。パーフェクト勝ち。

大体あいつ等のことは最初に会ったときから気に入らなかった。

物心ついた時から1人だった少女には、周りとつるんで集団で寄ってたかって1人をいじめて偉そうにふんぞり返ってるあいつらが嫌いだった。

別に襲われてた人を助けたのもその人が可哀想だからとか、ましてや心のそこ溢るる正義感とかそういったものなんかでは決してない。 

ただなんとなくムカついたから。だから邪魔して、被害者を逃がして、逃がす途中で被害者の懐から少しだけお金を失敬して、一人だけほくほく。だからついやってしまった。いまでも反省はしていない。隙あらばまたやろうと思っている



そんなことを考えつつ痛みに泣きそうになりながら歩いている黒猫少女に気付いた者が居た。







――――そんな猫抱き上げる、若い絵描きの腕



その日の朝の礼拝を終え教会から帰る途中、エルはちょっとした騒ぎに遭遇した。

今日は天気がいいのでなんとなくいつもと違う道で帰ろうと思いつき、金のポニーテールを揺らしながら路地裏に入ったときであった。



「・・・惜し・・・しやがれ」

そんな声が聞こえた。何事だろうとエルダナーン特有の長い耳をピコピコ動かしながら、声の聞こえる方に行ってみた。

袋小路の奥で一人の商人風の男を数人の少年たちがナイフを突きつけ、なにやら脅している所であった。

それを見たエルは、聖職者として、そうでなくても内から湧き上がるおせっかいな正義のために、少年たちに説教をくわえようと思って袋小路へ足を踏み入れようとしたときだった。



「おやぁ・・・ 数人掛かりでナイフ突きつけないとばんごはんにもありつけない玉無したちが雁首そろえてなにかやってるにゃ〜」

上のほうから、そんな少年たちを心底バカにしたようなまだ幼い少女の声が聞こえた。

「誰だっ!」

そう叫ぶ少年たちと、襲われている男と、エルの視線が近くの建物の屋根の方向に向く。

そこには一人の黒猫の少女が居た。

「またテメッ」

「これでも食べてろー」

少年が言い終わる前に少女はそんなことを言いつつ何かを放り投げた。

放り投げられたそれは、空中で白い粉を撒き散らし視界を遮った。

「うわっ、なんだこりゃっ」

少女が放り投げたのは、近所の倉庫から拝借してきた小麦粉の袋だった

狭い路地裏が白煙につつまれ少年たちが混乱している間に

「おっちゃん、こっちこっち!」

少女は商人風の男の手を取り路地裏から離脱していた。 ・・・ちゃっかり商人の財布を拝借しながら



「ふむ・・・スラムにもあのような正義の心に溢れる者が居るのだな。」

そう呟きつつ、エルダナーンの娘は未だ混乱している少年たちに正義の裁きを与えるために路地裏に歩みを進めた。





そんなことがあってから数日後、エルは教会の周りを掃除しているときに、あのときの黒猫の少女を見つけた。

少女は怪我をしているのか、痛みに顔を顰めながら通りを歩いていた。

「あの娘は・・・」

先日のことから察するに、きっと正義の行いをしてあのような怪我を負ったに違いない。そう勝手に頭の中で結論付けてエルは少女に向かって声をかけた。

「そこの娘、お待ちなさい。」

しかし少女は、自分にかけられたものだとは思ってないのか、はたまた無視しているのかそこから歩きさろうとしていた。

ちょっとムッとしてもう一度声をかけ、少女の腕を取った。

「お待ちなさいといっているでしょう。」





イタイイタイ。すごくイタイ。ナイフで斬られたことなんてなかったので痛さなんてせいぜい転んだときよりちょっとくらいの痛さだとおもってたのが甘かった。すごいイタイ。めちゃくちゃイタイ。多分今までで一番イタイ。それにしてもどうしよう。せっかく昨日見つけたばかりの寝床だったのに。雨や雪をしのげて、酒場の裏にほど近いから残飯やよっぱらいの懐からの収入もそこそこ見込めそうなよさげな場所だったのに、あの様子だと多分寝床もバレてるとみて間違いないだろう。それにしてもイタイ。すごいイタイ。それにお腹も空いた。ハラペコイタイ。すごいムカツク。

なんてことを考えて傷を見ないように歩いていたら誰かがいった。

「そこな娘、待ちなさい。」

待ちなさいって痛くてそれどころじゃないのに・・・ と声を無視してさらに歩を進める。

「待てといっているだろう。」

そういいながら近づいてきた人物に思いっきり腕を引っ張られた。 よりによって怪我してるほうの腕を。

「っっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

痛さのあまり思わず叫びそうになる。だけど叫ばない。叫んだら負けだから。だれかが勝ち負けを決めたわけじゃないけど自分でそう思ったから。



腕を取った瞬間、少女は歯を食いしばってた。

そして、こっちを恨みがましそうに睨んできた。

いや、本人は睨んでるつもりなんだろうが、眼にいっぱいに涙を溜めて大きなくりっとした瞳で上目遣いで睨まれても全然迫力がない。むしろ可愛い。

「待てといってるだろう?」

エルはそんな少女にあくまでいつもの調子で声をかける

「うるさいっ、なんのよう!?」

痛みのあまり声が上擦ってしまっている少女が言う。

「貴方の行いに関して少しお話でもと。」

と、静かにエルは言った。





すると、少女の表情が変わった。痛みによって泣きそうになりながら、腕を引っ張られたことに対して起こっていた顔が困惑した顔に変わり、次の瞬間に怯えた表情に変わった。

少女は思い出したのだ、以前この待祭の懐から少々失敬したことがあったのだ。 バレてないとおもっていたのだがまさかバレてたとは・・・

実際にはエルは少女に盗まれたということは全く知らなかった、それどころか、所持金が減っていたことにも気付いてすらいなかったのだが。





――――腕の中もがいて必死で引っ掻いて孤独と言う名の逃げ道を走った走った




「どうかしたか?」

あくまで淡々と話し掛けるエルに少女は恐怖を覚えた。

このまま官憲に突き出されて死刑にされてしまうのではないかと、大人ぶっていてもまだ9歳。ぜんぜん子供である。



―――― 生まれて初めての優しさが温もりがまだ信じられなくて



恐怖のあまり腕を振り払って逃げ出そうとする少女にエルは言葉を続ける。

「待て、猫よ。怪我をしているではないか?」



罠だ、怪我の手当てをする振りして衛兵に突き出すに違いない、このおばさんなら絶対やる、そう言う眼をしている。逃げなくては、逃げないと命が危ない。

パニくった少女は手を振り払い、言ってはいけない言葉を言ってしまった。

「離してよおばさん!!!」

瞬間、場が凍りついた。気のせいであろうが、体感温度が3度くらい下がった気がした。

「おば・・・さん・・・?」

エルの雰囲気が、いや、周囲の雰囲気が変わった。

思わずその雰囲気に飲まれてしまい、そこから逃げ出すことも忘れ、少女は恐る恐るエルの顔を見上げた。

そこには先ほどと表情を変えず、いや、こめかみに青筋を浮かべ、笑みを浮かべているエルが居た。



咄嗟に、凄い嫌な予感を感じ、踵を返し走り出す。 視界の端にドラゴンのようなものも映っていた気がするが、そんなこと気にしている場合ではない、いま逃げ出さないと殺される、生まれて始めて心のそこから殺されると感じた。

背後で光が炸裂した。



「あの子猫には少々しつけが必要なようね。」

通りの真中に出来たクレーターの中心でエルはそう呟いた。







――――どれだけ逃げたって変わり者は付いて来た



がむしゃらに逃げて走った。あの少年たち相手にもこれだけ死に物狂いで逃げたことはない。背後に相手の影が見えなくても、早くそこから離れないと殺されると思っていた。



ドンッ 

「・・・ってぇなあ・・・」

必死で走ってたせいで角から出てきた人物を避けることが出来ずぶつかってしまった。だがいつまでも転んでいる場合ではない、相手を確認している場合ではない、早く逃げなくてはそう思って立ち上がろうとしたとき、ぶつかった相手に髪を掴まれ無理矢理立ち上がらされた。



「わざわざ自分から戻ってきてくれるとはなぁ・・・ 探す手間省けたぜ黒猫ちゃんよぉ・・・」

相手はあのリーダー格の少年であった・・・



「離し・・・てっ・・・」

身軽さが唯一にして最大の武器である少女にとって掴まることは即ち負けることであった。

数人の少年たちに抑えられそのまま路地裏に引きずり込まれる。



袋小路までつれてこられるとそのまま地面に転がされた。

少女は腕の傷から血を流しすぎたせいか、それとも走りすぎたせいか意識が少し朦朧としていた。



「さて、如何してやろうか・・・」

少年が少女を見下しながら呟く。

「足をへし折って逃げられないようにして痛めつけてやろうか?」

「それよりも最低の娼館に売り払ってやろうぜ?」

嫌な笑みを浮かべながら少年たちが口々に言う・・・

それを聞きながら少女は初めて少年たちに恐怖をかんじた。

「それなら両足へし折って適当に痛めつけたあとに娼館に売り払おうぜ」

負けたくはなかった。だけど、どうしようもなかった。怖くて涙が出てきた。

「へっ、泣いてやがるぜこいつ。」

「まあ、今まで散々俺たちに逆らったことを後悔するんだな。」

「それじゃ行くぜ?」

角材を振り上げた少年が今まさに黒猫少女の足に振り下ろさんとした瞬間だった。



「幼い子猫に対してその行為は正義とはいえませんね。」

少年たちの背後から凛とした女性の声が響いた。

「だれだ!・・・!?」

少年たちがその声に振り向くと、そこには大口を開けた竜がいた。

「Fafnir・・・,Fire」

女性の声とともに、竜の大口から光が吐き出された。



竜・・・神獣ファーヴニルが放った煌弾は少年たちだけを確実に吹き飛ばした。

「冷たい地面の上でしばらく懺悔していろ。」

爆音の中、そんな声が聞こえた。







眼を覚ますと知らない場所にいた。

いつも寝ていた路地裏の寝床ではない。

背中に感じるのは路地裏の地面の冷たく固い感触ではなく、感じるのはいつ以来であろうか、柔らかい布団の感触であった。

「ここ・・・は・・・?」

身を起こして周囲を見る。 どこかの家だろうか、質素だが清潔感と温かみを感じさせる部屋だった。



どれくらい寝ていたのであろう、意識を失う前の記憶を思い出そうとしてみる。

最後に見たのは、大口を開けて光を吐き出す竜と、その光に吹き飛ばされる少年たちであった。



ふと怪我をしていた腕をみるとすでに傷はなかった。

いったいなにがあったのか、いったいなにがおこったのか、いったい何故自分がここに居るのか。

寝起きで上手く働かない頭を一生懸命働かせて考えてると部屋の扉が開いて誰かは言って来た。

そこに顔を向けてみると、そこには恐怖の塊が居た。

「ふむ、ようやく目覚めたか。」

こともなげにエルが言う。

だが少女にとってはそれどころではなかった。とっさにベッドから飛び降りて窓の方に向かう。

「な・・・なな・・・」

「ふむ目覚めたばかり混乱しているのか。」

「なな・・・な・・・」

「簡潔に言うと、お前が素行の悪そうな少年たちに絡まれていて、少年たちに正義が感じられなかったので少々正義の鉄槌をくわえてやったところ、お前が倒れていたので家までつれてきたという次第だ。」

「ということは・・・助けてくれたの?」

「そうなるな。」

「一応おれいいっとく・・・ありがとう」

「まぁ、それはさておき娘よ、お前の名前は?」

その質問に黒猫少女は俯き、答えない。

「どうした?」

「名無し(ネームレス)・・・」

吐き出すように少女は言う

「ネームレスか。変わった名前だな。」

少女の悲痛な声にズレた答えを返すエル。

「違うっ!そんな名前があるかっ!名無し(ネームレス)は名無し(ネームレス)!私は名前なんてないの!」

「ふむ、名前がないとはな。不便ではないか?」

「別に・・・ 誰も私のこと名前で呼ぼうとするやつなんていなかったし・・・」

「しかし、名前を付けてくれないとは酷い親だな。」

「酷い親も何もいないもん・・・親なんて・・・物心ついた時からあそこで一人だったし・・・」

「ふむ、まあそれは置いておくとしても、名前がないと不便だな。」

聖職者としてはちょっとどーかと思う答えを返しつつエルが呟く。

「別にいいよ・・・ なくても困らないし。」

「レスというのはどうだ?」

「へ?」

「いちいち考えるの面倒だし、今まで名無し(ネームレス)となのっていたのだろう? ならそこからとってレスだ」

「レス・・・れす・・・ うん・・・いいかも。」

「気に入ったか?」

「うん、ありがとう、おばさ・・・」

「姉様だろう?」

少女・・・レスの言葉を遮り、傍らに神竜を発現させつつ訂正を入れる。

「は・・・はひ・・・お姉さま・・・」

顔を青ざめさせ、言葉を訂正し必死に首を縦に振る

「わかればよろしい。」

そんなやり取りをしていると再びドアが開いて誰か入ってきた。

「あら〜、おきたのね〜、心配したのよ〜」

間延びした調子で、目つきを柔らかくしたような、何処となくほんわかした修道女の格好をした女性が入ってきた。

「4日も寝てたからまたエルちゃんが殺っちゃたんじゃないかって心配しちゃったのよ〜。エルちゃん加減って言うもの知らないから〜」

ほんわかと何気に怖いことを女性は言う。

「シスター、いくら私でも手加減くらい出来ます・・・。」

なにか論点のズレてるよーな気がすることを憮然とした表情で言うエル。

「ま、なんにしろ目覚めたならよかったわぁ。 ところであなた、お名前は?」

「レス・・・です」

「そう、レスちゃんて言うの。いいお名前ね」

「ところでシスター、レスをここに置いてやろうと思うのだけど」

「あらあら、それは良いわねぇ。けどレスちゃんのご両親が心配しないかしら?」

「あぁ、その心配はない。レスは両親がいないそうだ。」

「それなら心配ないわねぇ。 それじゃ、レスちゃんは今日からここの子ね」

「え・・・えっ?」

当事者を置き去りにしてどんどん話を進めていく二人に困惑しているうちに、レスはめでたく修道院"で暮らすことになっていた。

「ところでおばs・・・」

「私のこともお姉さま、もしくはシスターと呼びなさいね。まだ生きていたいでしょ?」

果物ナイフを首筋に突きつけられたレスは、顔を青ざめさせながら必死にうなずきながら思った。 

―――ここはスラムよりも恐ろしい場所なのかもしれない・・・と











数年後―――――――――

「これが私と、姉様の出会いってわけ。」

「なんか、今も昔もむちゃくちゃだね、二人とも」

セイが苦笑しながら呟く。

「ま、修道院に入ってからは色々大変だったけど、スラムにいたころよりは確実に幸せだったよ。 シスターから料理とか家事とか、フォモールにも通じる人体の急所とか戦場で生き残る108つの方法とかハンカチで人を殺す32の方法とか・・・ いろんなこといっぱい教えてもらったし、すごく楽しかったよ。素質なくて神術覚えられなかったのがちょっとくやしかったけど」

「フォモールにも通じる人体の急所とか戦場で生き残る108つの方法とかハンカチで人を殺す32の方法とかって・・・ ふつーの修道院じゃ教えないよね・・・? とゆーかそこって修道院じゃ無い気がするの気のせい・・・? ま、まぁ・・・さすがというかなんというか・・・」

「ま、おかげで冒険者としてもそこそこやっていけてるし、セイとも出会えたし、人生意外となるようになるもんだね。」



「こらーー-!セイ!レス!なにやってるの!」



「あ、もうこんな時間。お腹すかせると姉様凶暴化するから御飯作ってくるね」

「はい、いってらしゃい」



エルとレスの出会い  糸冬


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